養生訓 寝過ぎは良くない

先日恩師から本を沢山頂いたのでさっそく読ませて頂きました。

その中で興味深い一冊があったので紹介します。

貝原益軒 養生訓の訳本です。

随分と前に別の方が訳したものを読みましたが、すっかり内容を忘れてしまったので復習も兼ねて読んでみました。

貝原益軒は江戸時代儒教学者で医者ではないものの、医学にも精通しており逝去される前年の83才の時に庶民向けに養生訓を執筆されました。

当時の医学は鍼灸や湯液といったものでしたが、それらの医療を受けるより前に常日頃から養生をし、病を予防することが大切と説かれています。

養生訓は中国医学古典に基づいて書かれているものが多く、ほとんどの内容を理解することができましたが、その中でいくつか考えさせられるものがありました。

それは睡眠に関してとにかく惰眠はダメであり、睡眠は短い方が良いと説いていることです。

朝は早く起きて働くこと。食後は散歩などをして横になるのは慎しむことと書かれています。寝過ぎは気血を停滞させ元気を損ない、食後に横になると脾胃(胃腸)が滞るので軽い運動をして気血を回してあげると良いとされています。

しかし食後すぐに運動をすることは現代医学的に考えれば消化不良を起こしかねなく、最近では昼寝を肯定する研究も数多くあります。

私自身昼寝をした後に体調が良くなることを実感します。

では何故貝原先生は睡眠は短い方が良いとされたのでしょうか?

貝原先生はとにかく動くことを推奨されています。同一姿勢をとることは気血を停滞させるので、横になって寝ることはそもそも良くないと考えられたのでしょう。

また当時の時代背景から考えるに夜になったら寝るしかなく、日が昇るまで寝れば充分な睡眠時間が確保できたのではないでしょうか。そのため必要以上の睡眠を害悪としていたと考えられます。食後の運動に関しても1日2食で主食は米です。腹八分と言えど空きっ腹にお米を中心に食べたら血糖値が上がってしまい食後の倦怠感が多くあったのかもしれません。食後血糖値を軽い散歩をすることで抑えていたと考えれば理にかなっています。

しかしながら現代人は仕事に終われ夜が遅くなってしまうことは当たり前、特に日本人の平均睡眠時間は世界的にみても短いそうです。

人によっては昼寝をしないと睡眠時間を充分に確保できないなんて方も結構いらっしゃると思います。

医学や文化が発達すれば当然養生法も変わってくるものですし、貝原先生もその事は分かっているようです。

養生訓の中では中庸(偏りがないこと)、臨機応変に対応していくことがしっかり説かれているのです。

養生訓は江戸時代の生活様式、当時の日本の風土に合わせて作られたものです。

当然現代とは少し違ってきて当たり前な訳です。

睡眠は個々の生活スタイルに合わせ、日中眠気や集中力を欠くようであれば昼寝をしても良いのではないかと思います。

規則正しく生活できればそれに越した事はありませんが、それが難しくなっている現代ではそれくらいの柔軟性を持って養生された方が良いでしょう。

それにしても忙しい現代の日本人が世界的にみて長寿なのは、養生訓に書かれているように勤勉家が多く働き者が多いからかもしれませんね。

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