鍼は沢山刺せば効果がある?
前回に引き続き患者さんから多い質問に答えていきたいと思います。
昨今はあらゆる場で局所に沢山の鍼をしている写真や動画を見かけるようになりました。そういった写真は良くも悪くもインパクトがあり、あるいはとても効果のあるような印象を与えるかもしれません。(あるいは恐怖を感じる方もいらっしゃるかもしれません。)
しかし身体を変えていくには本当に多くの刺激が必要か考えてみる必要があります。
沢山すれば良いと思われがちな鍼ですが実はそうでもないのです。
経穴(ツボ)にはそれぞれ効能(刺激の方向性)がありますが、沢山うてばうつほど互いの効能を打ち消し合ったり、刺激に対する身体の反応が薄くなってしまうことがあります。
皆さんも日常で一度に沢山のことを指示されても思うように対応できないなんてことがあるんじゃないでしょうか?それは身体の生理反応も一緒なのです。
鍼の治療において大切なのは刺激の方向性です。その為には明確な理由があって鍼をしなければただの肉刺しをしているだけになってしまうのです。
具体的な治療の話しをしますと、のぼせが気になる方に対して頭に上った血液を降ろしたいのにも関わらず、あれもこれも経穴を組み合わせているうちにかえってのぼせを悪化させてしまったなんてことはよくあることです。
私も日頃の臨床を通して、使用する経穴(ツボ)の数が多くなってしまった時ほど、鍼の効果がぼやけてしまうのを実感しています。
また薬をいくつもの種類を飲んでいる方がいらっしゃいますが、薬剤でも2種類以上の服用をした場合は効果の増強や減弱、副作用が起こることがあります。(薬物相互作用)
過剰な身体に対する刺激は思わぬ副反応を起こすことがありますので注意が必要です。
上述したようにむやみやたらに鍼をしていては鍼の持つ効能を最大限に引き出すことはできませんので、当院では身体に起きている問題に対してピンポイントに効かすように少ない経穴(ツボ)を使って治療しています。
まず当院では患者様の身体にかかる負担を最小限に治療をすることをモットーにしていますので、問診や視診、触診などの東洋医学的診断をした上で必要な鍼やお灸をしていきます。
気になる部分や痛みのある部分に直接ガツンと鍼をして欲しい!なんて方もいらっしゃるかもしれませんが、気になる部分に鍼をするだけではお身体を変えていくことはできないのです。
それどころか症状を悪化させてしまう可能性もあるので慎重に刺激を加える経穴(ツボ)は選定していきます。
最善の効果を引き出すためには患者様のお身体の状態をよく見定めていき、上述したように明確な理由があって鍼をしていかなければなりません。